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遺言の効力

各項目をクリックして、ご覧ください。

  1. 遺言の効力の発生
  2. 停止条件付遺言
  3. 遺贈効力発生時期
  4. 特定物の遺贈
  5. 遺言執行者の任務
  6. 遺贈の放棄
  7. 遺贈放棄の期間
  8. 特定受遺者の遺贈放棄
  9. 遺贈義務者の催告権

 

遺言の効力の発生

① 遺言は、一定の方式にしたがって遺言書が作成されたときに成立します。このとき、意思表示としても法律行為としても遺言は成立し、その効力発生の時期は、遺言者死亡のときに発生すると解されています。

 

② これに対し、遺言の意思表示としての効力は、遺言の成立すなわち遺言書作成のときに生じ、法律行為としての効力は、遺言者死亡のときに生ずる、と述べる見解もあります。

 

③ 遺言はいつでも遺言者が自由に撤回できるとされるため、遺言者死亡時までは、法律上保護されるべき固定的な権利義務関係がそこから生ずるとは言えません。遺言者死亡時までは、意思表示としても法律行為としても、その効力は生じないというべきでしょう。

 

④ 遺言は、遺言書作成のときに成立し、遺言者死亡のときに効力を生じ、それまでは遺言者はいつでもこれを撤回する自由を持ちます。したがって、たとえば、受遺者は、遺言の成立により遺言者死亡のときに遺贈を受けるという期待を持ちうるけれども、いつでも撤回されるという制限に服するために、かかる受遺者の期待は、法律上の権利と呼ぶに値しないでしょう。

 

⑤ 推定相続人は、被相続人の死亡により相続するという、いわゆる期待権的相続権を持っているが、相続開始までに廃除されることもあり、欠格事由が発生することもあります。

 

⑥ しかし、推定相続人を廃除するにしても、後に欠格事由ありとすることも、それにつき積極的事由があることを必要とし、被相続人の自由な意思表示により推定相続人の期待権は、みだりに奪われることはありません。

 

⑦ だが、同順位相続人の増加、先順位相続人の出現などにより影響を受け、その内容が弱いことになります。

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停止条件付遺言

① 遺言の内容に、条件を付することが許される場合(法律行為の効果を確定的に発生・存続・消滅せしめることを要するものに条件を付することは許されない。その例として認知)には、停止条件付遺言をすることができます。たとえば、受遺者の婚姻を停止条件として家屋を遺贈するというような場合です。

 

② 受遺者は、遺言者の死亡により停止条件付権利を取得し、条件の成就により完全な権利を取得することになります。推定相続人が犯罪の嫌疑によって拘留されたため、被相続人が推定相続人を廃除するという遺言は、刑の確定のときに効力を生ずる停止条件付遺言であると認められるでしょう。

 

③ 民法第985条第二項の「遺言は、条件が成就したときからその効力を生ずる」という文言は、遺言の効力は、遺言者死亡のときに停止条件的に発生し、条件が成就したときに無条件の遺言としての効力を生ずる、という意味に解せられるでしょう。

 

④ 遺言者が遺言により条件成就の効果に遡及効を与えるときは、その効果は認められて良いでしょうが、遺言者の死亡前に遡及することは許されません。

 

⑤ 停止条件付遺言がなされたが、遺言者死亡以前に条件が成就すれば無条件の遺言となります。また、不成就が確定すれば、条件にかかる内容につき無効の遺言となります。

 

⑥ 解除条件付遺言も可能であり、遺言者死亡のとき、すでに条件が成就していれば無効の遺言となり、不成就に確定しているときは、無条件の遺言となります。死亡後に条件が成就すれば、そのときから遺言は効力を失います。

 

⑦ 始期または終期を付することが許される遺言内容であれば、始期付または終期付遺言が可能です。遺産分割禁止に関する遺言は、禁止につき、遺言者の死亡後5年を超える終期を付することは許されません。

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遺贈効力発生時期

① 遺贈がなされたとき、その効力発生の時期に理論上問題がないわけではありません。遺言者死亡のときに効力が当然に発生するとすれば、受遺者の意思とは無関係に効力が生ずることになります。

 

② しかし、受遺者には、遺贈を承認するか放棄するかの自由があり、放棄の効力は遺言者の死亡時に遡及するので、受遺者にとり結果的にはその意思が無視されるということにはなりません。だが、放棄の手続きをとるという面倒もあり、それまでの間に生じた法律関係に受遺者を巻き込んでしまうこともあります。

 

③ そのために、遺贈の効力を遺言者死亡のときに、当然に生ずるとはしないで、その効力発生を受遺者の意思にかからしめてはどうかという疑問が生じてきます。受遺者が遺言者の死亡を知らないときでも、また遺贈の事実を知らなくてもその効力が生ずることを考えれば、当然に生じてくる疑問です。

 

④ しかし、遺贈は受遺者の利益になるものであり、それを嫌う受遺者には放棄の自由があり、放棄手続きに若干のわずらわしさがあるにしても、格別の不利益を強制するとまでは言えないでしょう。また、遺贈が受遺者の承認のときから効力を生ずるとすれば、承認までの利益は相続人に帰し、あるいは、相続人が目的物を処分するなどの行為により、受遺者に不利益を与えることもあります。よって、遺言者の意思にも反すると考えられるので、遺贈の効力は、遺言者死亡のときに発生するとされたのです。

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特定物の遺贈

① 特定物または特定の権利が遺贈されるときは、判例や多数説によれば、原則として当然に物権的に権利が受遺者に移転すると解されています。遺贈の効力発生と同時に、受遺者は権利者になり、したがって、たとえば、相続人が遺贈の目的物につき、相続登記をしていれば、その抹消請求や仮処分の申請なども、受遺者としての権利に基づいて可能になります。

 

② 第三者に対する対抗力は別問題です。被相続人が、生前、不動産をある相続人に贈与するとともに、他の相続人にもこれを遺贈した後、相続があった場合、この贈与および遺贈による物権変動の優劣は対抗要件としての登記の具備をもって決せられることになります。

 

③ 指名債権が特定遺贈された場合、遺贈義務者の債務者に対する通知または債務者の承諾がなければ、受遺者は、遺贈による債権の取得を、債務者に対抗することができません。

 

④ 不特定物が遺贈の目的とされるときは、遺贈義務者はそれを受遺者に移転する債務を負担し、特定物に転化したときに権利は受遺者に移転することになります。

 

⑤ 特定物が遺贈の目的となっているときでも、その権利をただちに受遺者に移転することができないとき、たとえば、農地の遺贈のように、権利移転のために知事の許可を受けなければならないときは、遺贈義務者は許可の申請をしなければならず、許可があってはじめて権利移転の効力が生じることになります。

 

⑥ 遺贈の目的が相続財産に属さないときは、遺贈義務者は、その権利を取得して、これを受遺者に移転しなければなりません。

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遺言執行者の任務

① 遺言者の意思表示のみにより、遺言者死亡のときに効力を生ずるものとして次のようなものがあります。たとえば、遺言による未成年後見人や後見監督人の指定、相続分・遺産分割方法・遺言執行者の指定または指定の委託、遺産分割の禁止、相続人間の担保責任または遺留分減殺方法の指定などがあります。しかし、遺言の内容によっては遺言者の意思表示のみでは完全な効力を生じないものもあります。農地の遺贈もその一例です。

 

② 相続人の廃除または廃除の取消の遺言があるとき、遺言執行者は、遺言者死亡後、遅滞なく家庭裁判所に廃除または廃除の取消しを請求しなければなりません。そして、家庭裁判所の審判があれば、廃除または廃除取消しの効力は、遺言者の死亡時に遡及して生じます。遺言により、廃除または廃除の取消しの効果が生ずるのではなく、それを家庭裁判所に請求しうるにとどまるが、遺言執行者をして裁判所にそれを請求せしめる限りにおいて、遺言の効力は遺言者死亡のときに生ずるのです。

 

③ 認知は遺言によってすることもできます。遺言認知があれば、遺言執行者は就職の日から10日以内にその届出をしなければなりません。認知の効力は、遺言者死亡のときに発生するのか、あるいはまた、生存中の認知と同じく、認知の届出の受理によって生ずるのか問題です。これについて、届出のときではなく、遺言者死亡のときに効力が生じ、この出生時に効力が遡及するというのが一般的見解です。

 

④ 遺言認知の届出は、必然的に遺言者の死亡後になされるが、遺言認知は任意認知の一種であり、少なくとも遺言者死亡のときに効力を生ずると解するのが妥当であり、この場合の届出は、単なる戸籍上の手続きに過ぎず報告的届出です。

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遺贈の放棄

① 遺贈は、遺贈者(=遺言者)のなす単独行為です。遺言の効力が生じたとき、すなわち遺贈者の死亡時に、死亡につき受遺者が知ると知らざるを問わず、またその意思とは無関係に、当然に効力が生じます。遺贈は、受遺者にとり利益になるのが原則ですが、利益になるとしても、その受益を受遺者の意思と無関係に強制してよい理由はありません。かくして、受遺者は遺贈者の死亡後いつでも任意に、遺贈を放棄することができるとされるのです。

 

② 遺贈をそのまま受けるには、受遺者による遺贈の承認であるが、承認により遺贈の効果が発生するのではなく、遺贈者の死亡により発生した遺贈の効果の確定にすぎません。いわば、放棄権の放棄です。承認といっても、受遺者による明示の意思表示が必要だというわけではなく、黙示のそれでもよいのです。

 

③ 遺贈には、包括遺贈と特定遺贈とがあります。包括受遺者は、相続人と同一の権利・義務を持つので、包括受遺者が遺贈を承認または放棄するについても、相続人の承認・放棄に関する規定が適用されます。よって、自己のために包括遺贈があったことを知ったときから、3月以内に家庭裁判所に放棄または限定承認の申述をしなければ、単純承認をしたものとみなされます。

 

④ したがって、民法第986条「受遺者は、遺言者の死亡後いつでも遺贈の放棄をすることができる」という規定は、包括遺贈には適用がなく、特定遺贈にのみ適用があります。特定遺贈は、受遺者をして債務を負担せしめないので、限定承認の問題は生じません。

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遺贈放棄の期間

① 遺贈放棄するのに、期間の定めはありません。受遺者は、遺贈者の死亡後、いつでも遺贈放棄することができます。遺贈者の死亡前は、受遺者はなんの権利も取得していないので、死亡前の放棄は無意味です。

② 停止条件付遺贈は、遺贈者の死亡後、条件成就までは完全な効力を生じないが、なお条件付権利は受遺者に帰属するので、遺贈者の死亡後、放棄は可能です。

③ 遺言者が、放棄の期間を定めているときは、その期間の制限に服すると解されます。

④ 放棄は受遺者の自由ですが、債務免除の遺贈にだけは放棄できないとするのが多数説です。生前における債務免除が、債権者の単独行為によりその効力が生ずるのに対して、遺言による債務免除についてだけ放棄できるとすることは均衡がとれないこと、また、債務免除は受遺者にとり経済的に利益に働くことを、その理由としています。

⑤ 放棄の方式について規定はありません。包括遺贈の放棄は、家庭裁判所に対する放棄の申述によりなされますが、特定遺贈については別段の定めがないので、その形式は問わないにしても、意思表示の相手方が問題になります。

⑥ 判例・多数説は、遺贈義務者が相手方になると述べています。それが、遺贈義務者のなかに遺言執行者を含ましめる意味なのかどうか、必ずしも明らかではありません。廃除すべき理由はないので、遺言執行者もまた、遺贈義務者に含めてよいと思われます。

⑦ 遺言執行者の任務は、遺言者の申述の意思の実現にあり、必ずしも相続人の利益のためにのみ行為すべき義務はなく、むしろ、主として受益者の利益を保護することにあるからです。

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特定受遺者の遺贈放棄

① 特定受遺者が、遺贈放棄するか否かは、包括遺贈の放棄ほどの重要性が利害関係人にとって生じないと一般的に言えるとしても、特定遺贈の放棄の期間に制限がないことは、遺贈義務者その他の利害関係人に権利関係の不安定を強要することになります。

② そのために、民法は、遺贈義務者その他利害関係人に、特定受遺者に対する承認または放棄についての催告権を与えています。

③ 遺贈の承認または放棄は、受遺者の単独の意思表示によりなされるので、放棄者が制限能力者であるときは、制限能力者の法律行為に関する制限に服します。破産法は、破産管財人が、受遺者に代わって遺贈の承認・放棄ができると規定しています。

④ 包括遺贈と異なり、特定遺贈の内容が過分であるときは、その一部の放棄も認められてよいでしょう。しかし、一部の放棄を禁ずる遺言があれば、それに従うべきかと思います。受遺者が、いったん遺贈を承認した後に、個々の受遺物についての権利を放棄することは自由ですが、これは遺贈の放棄ではありません。

⑤ 特定遺贈の効力は遺贈者の死亡のときに遡及して生じます。遡及しなければ、遺贈者の死亡後、遺贈の放棄までの間は、遺贈の目的物は受遺者に属することになり、放棄によりさらに他の者に移転するということになって、放棄の趣旨に反することになるからです。受遺者が受けるべきであったものは放棄により、遺言に特段の定めがない限り、相続人に帰属します。

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遺贈義務者の催告権

総説

民法第987条は次のように定めています。すなわち、「遺贈義務者その他の利害関係人は、相当の期間を定め、その期間内に遺贈の承認または放棄をすべき旨を受遺者に催告することができます。もし、受遺者がその期間内に遺贈義務者に対してその意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなします。」との規定です。

 

本条の趣旨

① 特定遺贈の受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも遺贈の放棄ができ、放棄の効力は、遺言者の死亡のときに遡及して生じます。遺贈の放棄は自由にすることができますし、期間の制限もありません。相続人と同視される包括受遺者が、原則として遺言者死亡後三月以内に家庭裁判所に放棄の申述をしなければならないのと異なります。

② 特定遺贈の放棄につき期間の定めがないことは、必然的に、遺贈義務者その他の利害関係人に対し、権利関係の不安定を強要することになります。

③ そこで民法は、これらのものに対し、相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承認または放棄をなすべき旨を催告することができるとしました。そして、その期間内に、受遺者が遺贈義務者に対し放棄の意思表示をしないときは、遺贈を承認としたものとみなす、と規定したのです。

 

受遺者の死亡

① 受遺者が遺贈の承認または放棄についての催告を受け、催告期間内にそれに対しなんらの意思表示をすることなく死亡したときは、どのように解釈すべきでしょうか。

② この場合は、その相続人については、催告期間は、相続人が、自己のために相続が開始し、かつ、放棄または承認についての催告があったことを知ったときから起算される、と解されています。

 

相続人の催告

① 相続人が、複数人いる場合、受遺者への催告は、誰がすべきでしょうか。

② このような場合、各自は単独で催告することができると解され、催告に別段の方式はありません。すなわち、多数決で催告者を決する必要はないのです。

 

受遺者が制限能力者であるとき

① 受遺者が未成年者または成年被後見人であるとき、その法定代理人が催告の事実を知らない限り、催告をもって受遺者に対抗することはできません。承認または放棄について、確答を求める本条の催告は、いわゆる意思の通知ですが、意思表示の受領能力に関する民法第98条が準用されてよいのです。

② 遺贈が単純遺贈であり、受遺者が未成年者または被補佐人であれば、催告が受領された後、催告期間内に確答がないときは承認の効果を生じますが、負担付遺贈のときは、反対に放棄と解されるでしょう。

③ 負担は遺贈の対価ではなく、負担付遺贈は必ずしも受遺者である未成年者または被補佐人に不利益を与えるものではないですが、負担付遺贈を受諾するについて被補佐人は、補佐人の同意を得ることとされています。この場合、被補佐人の相手方の催告に対し、催告期間内に補佐人の同意を得た通知を発しないときは取り消したものとみなすという民法の規定(19条4項)の趣旨からそう解すべきものと思われます。

 

遺贈義務者

① 遺贈義務者とは、遺贈の内容を実現する義務がある者で、相続人であることが普通ですが、相続人のあることが明らかでないときの相続財産法人や包括受遺者も、特定受遺者に対する遺贈義務者となります。

② 特定不動産の遺贈があるときは、判例および多数説によれば、遺言者死亡のとき、所有権は受遺者に当然に移転しますが、その引き渡し、移転登記などの義務が遺贈義務者に課せられることになります。

③ 承認または放棄の意思表示の受領者は遺贈義務者であり、その他の利害関係人は受領権限を持ちません。別言すれば、遺贈義務者以外の者に対してなした承認または放棄の意思表示は、その効力を持ちません。

④ 催告期間を過ぎれば、承認とみなされてしまうことになります。

⑤ 承認・放棄の効果は、画一的に一切の利害関係人におよぶため、催告に関する確答は主たる利害関係人である遺贈義務者に対してなされるべきであるというのがその理由です。

 

遺贈義務者が数人いる場合

① 遺贈義務者として数人の相続人がいるとき、そのひとりに対してのみ放棄の意思を表示したとき、他の共同相続人に対しても、放棄の効力を生ずるのでしょうか。

② ひとりに対する放棄は絶対的効力を生じ、他の共同相続人に対してもその効力はおよぶと解されています。放棄の結果、遺贈は遡及的に消滅し、相続財産として各共同相続人の共同所有に属することになります。

③ 相続財産に復帰することにより、共同相続人に不利益を与えることもなく、また、放棄を知らない共同相続人に受益を強いることになるとしても、もともと遺贈がなければ各共同相続人に帰するはずであった相続財産が、それぞれに各相続人に応じて帰属するだけのことに過ぎないので、放棄に絶対的効力を認めても不都合はないのです。

 

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