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遺言の効力

遺言の効力

各項目をクリックして、ご覧ください。

  1. 遺言の効力の発生
  2. 停止条件付遺言
  3. 遺贈効力発生時期
  4. 特定物の遺贈
  5. 遺言執行者の任務
  6. 遺贈の放棄
  7. 遺贈放棄の期間
  8. 特定受遺者の遺贈放棄
  9. 遺贈義務者の催告権
  10. 特定受遺者の相続人の承認・放棄
  11. 遺贈の承認・放棄の取消、無効
  12. 包括遺贈と相続の差異
  13. 受遺者の担保請求権
  14. 受遺者の果実取得権
  15. 遺贈義務者の費用償還請求権

 

遺言の効力の発生

① 遺言は、一定の方式にしたがって遺言書が作成されたときに成立します。このとき、意思表示としても法律行為としても遺言は成立し、その効力発生の時期は、遺言者死亡のときに発生すると解されています。

 

② これに対し、遺言の意思表示としての効力は、遺言の成立すなわち遺言書作成のときに生じ、法律行為としての効力は、遺言者死亡のときに生ずる、と述べる見解もあります。

 

③ 遺言はいつでも遺言者が自由に撤回できるとされるため、遺言者死亡時までは、法律上保護されるべき固定的な権利義務関係がそこから生ずるとは言えません。遺言者死亡時までは、意思表示としても法律行為としても、その効力は生じないというべきでしょう。

 

④ 遺言は、遺言書作成のときに成立し、遺言者死亡のときに効力を生じ、それまでは遺言者はいつでもこれを撤回する自由を持ちます。したがって、たとえば、受遺者は、遺言の成立により遺言者死亡のときに遺贈を受けるという期待を持ちうるけれども、いつでも撤回されるという制限に服するために、かかる受遺者の期待は、法律上の権利と呼ぶに値しないでしょう。

 

⑤ 推定相続人は、被相続人の死亡により相続するという、いわゆる期待権的相続権を持っているが、相続開始までに廃除されることもあり、欠格事由が発生することもあります。

 

⑥ しかし、推定相続人を廃除するにしても、後に欠格事由ありとすることも、それにつき積極的事由があることを必要とし、被相続人の自由な意思表示により推定相続人の期待権は、みだりに奪われることはありません。

 

⑦ だが、同順位相続人の増加、先順位相続人の出現などにより影響を受け、その内容が弱いことになります。

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停止条件付遺言

① 遺言の内容に、条件を付することが許される場合(法律行為の効果を確定的に発生・存続・消滅せしめることを要するものに条件を付することは許されない。その例として認知)には、停止条件付遺言をすることができます。たとえば、受遺者の婚姻を停止条件として家屋を遺贈するというような場合です。

 

② 受遺者は、遺言者の死亡により停止条件付権利を取得し、条件の成就により完全な権利を取得することになります。推定相続人が犯罪の嫌疑によって拘留されたため、被相続人が推定相続人を廃除するという遺言は、刑の確定のときに効力を生ずる停止条件付遺言であると認められるでしょう。

 

③ 民法第985条第二項の「遺言は、条件が成就したときからその効力を生ずる」という文言は、遺言の効力は、遺言者死亡のときに停止条件的に発生し、条件が成就したときに無条件の遺言としての効力を生ずる、という意味に解せられるでしょう。

 

④ 遺言者が遺言により条件成就の効果に遡及効を与えるときは、その効果は認められて良いでしょうが、遺言者の死亡前に遡及することは許されません。

 

⑤ 停止条件付遺言がなされたが、遺言者死亡以前に条件が成就すれば無条件の遺言となります。また、不成就が確定すれば、条件にかかる内容につき無効の遺言となります。

 

⑥ 解除条件付遺言も可能であり、遺言者死亡のとき、すでに条件が成就していれば無効の遺言となり、不成就に確定しているときは、無条件の遺言となります。死亡後に条件が成就すれば、そのときから遺言は効力を失います。

 

⑦ 始期または終期を付することが許される遺言内容であれば、始期付または終期付遺言が可能です。遺産分割禁止に関する遺言は、禁止につき、遺言者の死亡後5年を超える終期を付することは許されません。

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遺贈効力発生時期

① 遺贈がなされたとき、その効力発生の時期に理論上問題がないわけではありません。遺言者死亡のときに効力が当然に発生するとすれば、受遺者の意思とは無関係に効力が生ずることになります。

 

② しかし、受遺者には、遺贈を承認するか放棄するかの自由があり、放棄の効力は遺言者の死亡時に遡及するので、受遺者にとり結果的にはその意思が無視されるということにはなりません。だが、放棄の手続きをとるという面倒もあり、それまでの間に生じた法律関係に受遺者を巻き込んでしまうこともあります。

 

③ そのために、遺贈の効力を遺言者死亡のときに、当然に生ずるとはしないで、その効力発生を受遺者の意思にかからしめてはどうかという疑問が生じてきます。受遺者が遺言者の死亡を知らないときでも、また遺贈の事実を知らなくてもその効力が生ずることを考えれば、当然に生じてくる疑問です。

 

④ しかし、遺贈は受遺者の利益になるものであり、それを嫌う受遺者には放棄の自由があり、放棄手続きに若干のわずらわしさがあるにしても、格別の不利益を強制するとまでは言えないでしょう。また、遺贈が受遺者の承認のときから効力を生ずるとすれば、承認までの利益は相続人に帰し、あるいは、相続人が目的物を処分するなどの行為により、受遺者に不利益を与えることもあります。よって、遺言者の意思にも反すると考えられるので、遺贈の効力は、遺言者死亡のときに発生するとされたのです。

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特定物の遺贈

① 特定物または特定の権利が遺贈されるときは、判例や多数説によれば、原則として当然に物権的に権利が受遺者に移転すると解されています。遺贈の効力発生と同時に、受遺者は権利者になり、したがって、たとえば、相続人が遺贈の目的物につき、相続登記をしていれば、その抹消請求や仮処分の申請なども、受遺者としての権利に基づいて可能になります。

 

② 第三者に対する対抗力は別問題です。被相続人が、生前、不動産をある相続人に贈与するとともに、他の相続人にもこれを遺贈した後、相続があった場合、この贈与および遺贈による物権変動の優劣は対抗要件としての登記の具備をもって決せられることになります。

 

③ 指名債権が特定遺贈された場合、遺贈義務者の債務者に対する通知または債務者の承諾がなければ、受遺者は、遺贈による債権の取得を、債務者に対抗することができません。

 

④ 不特定物が遺贈の目的とされるときは、遺贈義務者はそれを受遺者に移転する債務を負担し、特定物に転化したときに権利は受遺者に移転することになります。

 

⑤ 特定物が遺贈の目的となっているときでも、その権利をただちに受遺者に移転することができないとき、たとえば、農地の遺贈のように、権利移転のために知事の許可を受けなければならないときは、遺贈義務者は許可の申請をしなければならず、許可があってはじめて権利移転の効力が生じることになります。

 

⑥ 遺贈の目的が相続財産に属さないときは、遺贈義務者は、その権利を取得して、これを受遺者に移転しなければなりません。

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遺言執行者の任務

① 遺言者の意思表示のみにより、遺言者死亡のときに効力を生ずるものとして次のようなものがあります。たとえば、遺言による未成年後見人や後見監督人の指定、相続分・遺産分割方法・遺言執行者の指定または指定の委託、遺産分割の禁止、相続人間の担保責任または遺留分減殺方法の指定などがあります。しかし、遺言の内容によっては遺言者の意思表示のみでは完全な効力を生じないものもあります。農地の遺贈もその一例です。

 

② 相続人の廃除または廃除の取消の遺言があるとき、遺言執行者は、遺言者死亡後、遅滞なく家庭裁判所に廃除または廃除の取消しを請求しなければなりません。そして、家庭裁判所の審判があれば、廃除または廃除取消しの効力は、遺言者の死亡時に遡及して生じます。遺言により、廃除または廃除の取消しの効果が生ずるのではなく、それを家庭裁判所に請求しうるにとどまるが、遺言執行者をして裁判所にそれを請求せしめる限りにおいて、遺言の効力は遺言者死亡のときに生ずるのです。

 

③ 認知は遺言によってすることもできます。遺言認知があれば、遺言執行者は就職の日から10日以内にその届出をしなければなりません。認知の効力は、遺言者死亡のときに発生するのか、あるいはまた、生存中の認知と同じく、認知の届出の受理によって生ずるのか問題です。これについて、届出のときではなく、遺言者死亡のときに効力が生じ、この出生時に効力が遡及するというのが一般的見解です。

 

④ 遺言認知の届出は、必然的に遺言者の死亡後になされるが、遺言認知は任意認知の一種であり、少なくとも遺言者死亡のときに効力を生ずると解するのが妥当であり、この場合の届出は、単なる戸籍上の手続きに過ぎず報告的届出です。

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遺贈の放棄

① 遺贈は、遺贈者(=遺言者)のなす単独行為です。遺言の効力が生じたとき、すなわち遺贈者の死亡時に、死亡につき受遺者が知ると知らざるを問わず、またその意思とは無関係に、当然に効力が生じます。遺贈は、受遺者にとり利益になるのが原則ですが、利益になるとしても、その受益を受遺者の意思と無関係に強制してよい理由はありません。かくして、受遺者は遺贈者の死亡後いつでも任意に、遺贈を放棄することができるとされるのです。

 

② 遺贈をそのまま受けるには、受遺者による遺贈の承認であるが、承認により遺贈の効果が発生するのではなく、遺贈者の死亡により発生した遺贈の効果の確定にすぎません。いわば、放棄権の放棄です。承認といっても、受遺者による明示の意思表示が必要だというわけではなく、黙示のそれでもよいのです。

 

③ 遺贈には、包括遺贈と特定遺贈とがあります。包括受遺者は、相続人と同一の権利・義務を持つので、包括受遺者が遺贈を承認または放棄するについても、相続人の承認・放棄に関する規定が適用されます。よって、自己のために包括遺贈があったことを知ったときから、3月以内に家庭裁判所に放棄または限定承認の申述をしなければ、単純承認をしたものとみなされます。

 

④ したがって、民法第986条「受遺者は、遺言者の死亡後いつでも遺贈の放棄をすることができる」という規定は、包括遺贈には適用がなく、特定遺贈にのみ適用があります。特定遺贈は、受遺者をして債務を負担せしめないので、限定承認の問題は生じません。

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遺贈放棄の期間

① 遺贈放棄するのに、期間の定めはありません。受遺者は、遺贈者の死亡後、いつでも遺贈放棄することができます。遺贈者の死亡前は、受遺者はなんの権利も取得していないので、死亡前の放棄は無意味です。

② 停止条件付遺贈は、遺贈者の死亡後、条件成就までは完全な効力を生じないが、なお条件付権利は受遺者に帰属するので、遺贈者の死亡後、放棄は可能です。

③ 遺言者が、放棄の期間を定めているときは、その期間の制限に服すると解されます。

④ 放棄は受遺者の自由ですが、債務免除の遺贈にだけは放棄できないとするのが多数説です。生前における債務免除が、債権者の単独行為によりその効力が生ずるのに対して、遺言による債務免除についてだけ放棄できるとすることは均衡がとれないこと、また、債務免除は受遺者にとり経済的に利益に働くことを、その理由としています。

⑤ 放棄の方式について規定はありません。包括遺贈の放棄は、家庭裁判所に対する放棄の申述によりなされますが、特定遺贈については別段の定めがないので、その形式は問わないにしても、意思表示の相手方が問題になります。

⑥ 判例・多数説は、遺贈義務者が相手方になると述べています。それが、遺贈義務者のなかに遺言執行者を含ましめる意味なのかどうか、必ずしも明らかではありません。廃除すべき理由はないので、遺言執行者もまた、遺贈義務者に含めてよいと思われます。

⑦ 遺言執行者の任務は、遺言者の申述の意思の実現にあり、必ずしも相続人の利益のためにのみ行為すべき義務はなく、むしろ、主として受益者の利益を保護することにあるからです。

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特定受遺者の遺贈放棄

① 特定受遺者が、遺贈放棄するか否かは、包括遺贈の放棄ほどの重要性が利害関係人にとって生じないと一般的に言えるとしても、特定遺贈の放棄の期間に制限がないことは、遺贈義務者その他の利害関係人に権利関係の不安定を強要することになります。

② そのために、民法は、遺贈義務者その他利害関係人に、特定受遺者に対する承認または放棄についての催告権を与えています。

③ 遺贈の承認または放棄は、受遺者の単独の意思表示によりなされるので、放棄者が制限能力者であるときは、制限能力者の法律行為に関する制限に服します。破産法は、破産管財人が、受遺者に代わって遺贈の承認・放棄ができると規定しています。

④ 包括遺贈と異なり、特定遺贈の内容が過分であるときは、その一部の放棄も認められてよいでしょう。しかし、一部の放棄を禁ずる遺言があれば、それに従うべきかと思います。受遺者が、いったん遺贈を承認した後に、個々の受遺物についての権利を放棄することは自由ですが、これは遺贈の放棄ではありません。

⑤ 特定遺贈の効力は遺贈者の死亡のときに遡及して生じます。遡及しなければ、遺贈者の死亡後、遺贈の放棄までの間は、遺贈の目的物は受遺者に属することになり、放棄によりさらに他の者に移転するということになって、放棄の趣旨に反することになるからです。受遺者が受けるべきであったものは放棄により、遺言に特段の定めがない限り、相続人に帰属します。

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遺贈義務者の催告権

総説

民法第987条は次のように定めています。すなわち、「遺贈義務者その他の利害関係人は、相当の期間を定め、その期間内に遺贈の承認または放棄をすべき旨を受遺者に催告することができます。もし、受遺者がその期間内に遺贈義務者に対してその意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなします。」との規定です。

 

本条の趣旨

① 特定遺贈の受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも遺贈の放棄ができ、放棄の効力は、遺言者の死亡のときに遡及して生じます。遺贈の放棄は自由にすることができますし、期間の制限もありません。相続人と同視される包括受遺者が、原則として遺言者死亡後三月以内に家庭裁判所に放棄の申述をしなければならないのと異なります。

② 特定遺贈の放棄につき期間の定めがないことは、必然的に、遺贈義務者その他の利害関係人に対し、権利関係の不安定を強要することになります。

③ そこで民法は、これらのものに対し、相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承認または放棄をなすべき旨を催告することができるとしました。そして、その期間内に、受遺者が遺贈義務者に対し放棄の意思表示をしないときは、遺贈を承認としたものとみなす、と規定したのです。

 

受遺者の死亡

① 受遺者が遺贈の承認または放棄についての催告を受け、催告期間内にそれに対しなんらの意思表示をすることなく死亡したときは、どのように解釈すべきでしょうか。

② この場合は、その相続人については、催告期間は、相続人が、自己のために相続が開始し、かつ、放棄または承認についての催告があったことを知ったときから起算される、と解されています。

 

相続人の催告

① 相続人が、複数人いる場合、受遺者への催告は、誰がすべきでしょうか。

② このような場合、各自は単独で催告することができると解され、催告に別段の方式はありません。すなわち、多数決で催告者を決する必要はないのです。

 

受遺者が制限能力者であるとき

① 受遺者が未成年者または成年被後見人であるとき、その法定代理人が催告の事実を知らない限り、催告をもって受遺者に対抗することはできません。承認または放棄について、確答を求める本条の催告は、いわゆる意思の通知ですが、意思表示の受領能力に関する民法第98条が準用されてよいのです。

② 遺贈が単純遺贈であり、受遺者が未成年者または被補佐人であれば、催告が受領された後、催告期間内に確答がないときは承認の効果を生じますが、負担付遺贈のときは、反対に放棄と解されるでしょう。

③ 負担は遺贈の対価ではなく、負担付遺贈は必ずしも受遺者である未成年者または被補佐人に不利益を与えるものではないですが、負担付遺贈を受諾するについて被補佐人は、補佐人の同意を得ることとされています。この場合、被補佐人の相手方の催告に対し、催告期間内に補佐人の同意を得た通知を発しないときは取り消したものとみなすという民法の規定(19条4項)の趣旨からそう解すべきものと思われます。

 

遺贈義務者

① 遺贈義務者とは、遺贈の内容を実現する義務がある者で、相続人であることが普通ですが、相続人のあることが明らかでないときの相続財産法人や包括受遺者も、特定受遺者に対する遺贈義務者となります。

② 特定不動産の遺贈があるときは、判例および多数説によれば、遺言者死亡のとき、所有権は受遺者に当然に移転しますが、その引き渡し、移転登記などの義務が遺贈義務者に課せられることになります。

③ 承認または放棄の意思表示の受領者は遺贈義務者であり、その他の利害関係人は受領権限を持ちません。別言すれば、遺贈義務者以外の者に対してなした承認または放棄の意思表示は、その効力を持ちません。

④ 催告期間を過ぎれば、承認とみなされてしまうことになります。

⑤ 承認・放棄の効果は、画一的に一切の利害関係人におよぶため、催告に関する確答は主たる利害関係人である遺贈義務者に対してなされるべきであるというのがその理由です。

 

遺贈義務者が数人いる場合

① 遺贈義務者として数人の相続人がいるとき、そのひとりに対してのみ放棄の意思を表示したとき、他の共同相続人に対しても、放棄の効力を生ずるのでしょうか。

② ひとりに対する放棄は絶対的効力を生じ、他の共同相続人に対してもその効力はおよぶと解されています。放棄の結果、遺贈は遡及的に消滅し、相続財産として各共同相続人の共同所有に属することになります。

③ 相続財産に復帰することにより、共同相続人に不利益を与えることもなく、また、放棄を知らない共同相続人に受益を強いることになるとしても、もともと遺贈がなければ各共同相続人に帰するはずであった相続財産が、それぞれに各相続人に応じて帰属するだけのことに過ぎないので、放棄に絶対的効力を認めても不都合はないのです。

 

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特定受遺者の相続人の承認・放棄

総説

① 受遺者が、遺贈の承認または放棄をしないで死亡したときは、どうなるでしょうか。

② 民法第988条は、次のように定めています。すなわち、「受遺者が、遺贈の承認または放棄をしないで死亡したときは、その相続人は、自己の相続権の範囲内で承認または放棄をすることができます。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従います。」という規定です。

 

本条の趣旨

① 本条は、特定受遺者の遺贈の承認または放棄をしないで死亡したとき、その相続人のなす承認または放棄について規定しています。包括受遺者は、相続人と同視されるため、包括受遺者の相続人については、本条の適用はありません。

② 特定受遺者は遺贈の承認または放棄につき、自由を有します。受遺者が、遺贈を承認または放棄した後に死亡すれば、その相続人は、承認または放棄した受遺者の地位をそのまま承継するだけです。

③ 承認・放棄をしないで死亡したときも、かかる受遺者の地位を相続人が承継するだけで、格別の問題もなさそうに見えますが、相続人が数人あるときは、相続人が全員で承認または放棄をしなければならないのでしょうか。

④ また、全員による承認・放棄を必要としないとしても、そのひとりが放棄したときの放棄受遺分の帰属や、承認・放棄につき遺贈義務者その他の利害関係人からすでに受遺者に催告があったときは、受遺者の相続人につき催告期間をどのように考えべきか、などの問題が生じてきます。

 

遺言者の意思

① 相続により、受遺者の権利・義務は包括的にその相続人が承継し、受遺物についてもそうであるのが原則です。

② しかし、遺言者が、遺言に別段の意思表示をなしたときは、その意思に従います。たとえば、「越谷受遺者が遺贈の承認・放棄前に死亡したときは、受遺者に対する遺贈の効力を失わしめ、他のものに遺贈する」という、意思表示の場合です。

③ 遺言者の意思の尊重という点からみて、当然なことであり、本条本文は強行規定ではありません。

④ しかし、受遺者の相続人を不当に拘束する意思表示(たとえば、相続人に放棄を許さないとするなど)は許されません。

⑤ なお、受遺者の数人の相続人が、共同で承認し、または放棄すべきという意思表示は、差し支えないでしょう。

 

一部の相続人の放棄

① 受遺者の相続人が数人いるとき、各相続人は、それぞれの相続分にしたがって受遺者を相続し、遺贈についても各自の相続分にしたがって相続します。受遺者の承認・放棄する権利も、各共同相続人に独立に承継され、それぞれの受遺相続分につき、承認または放棄することになります。

② 遺贈の弁済期未到来の間は、遺贈義務者に対しそれぞれの受遺相続分の範囲内で、相当の担保を請求することができます。つまり、受遺者の相続人が、全員共同で承認し、または放棄をする必要はありません。

③ 本条が「自己の相続権の範囲内で」と述べているのは、各自の相続分にしたがってということを意味します。一部の相続人が相続した受遺分を放棄したとき、その放棄受遺分は、他の承認した共同相続人に、それぞれの相続分に応じて帰属すると解されます。

④ 相続人が、相続人たる地位そのものを放棄しているときは、遺贈の相続は問題になりません。それにつき、承認または放棄ということはありません。

⑤ 相続人が限定承認をすれば、その効果として受遺者の権利・義務の一切を承継し、ただ、相続によって得た財産の限度でのみ受遺者の債務を弁済する責を負うことになるので、遺贈を相続分にしたがって承継し、それは相続財産として計算されます。

⑥ しかし、その相続した受遺分につき、放棄または承認する権利を失わないと解されます。

 

催告期間の計算

① 受遺者が生前に、遺贈義務者その他の利害関係人から、相当の期間を定めて遺贈の承認・放棄についての催告を受け、確答しないうちに死亡したとき、受遺者の相続人につき、催告の起算点はどこにおかれるべきでしょうか。

② 受遺者の相続人は、受遺者の一切の権利・義務を包括的に承継するので、すでになされた催告についても、催告をめぐる法律関係をそのまま承継し、承認・放棄につき確定すべき期間の起算点も、受遺者になされた催告のときとみるべきように解されもします。

③ しかし、そうすると、受遺者の死後残存期間が短いときは、受遺者の相続人にとり酷な事態も生じかねません。そこで、相続人が承認または放棄しないで死亡したときの、その者の相続人の承認または放棄についての起算点を規定する第916条の趣旨を考慮すれば、次のように解すべきでしょう。

④ すなわち、受遺者の相続人が自己のために相続が開始したことを知り、かつ、被相続人たる受遺者に催告があったときことを知ったときから、受遺者の相続人についての催告期間は計算されるべきであると解されます。

⑤ 受遺者が生前、遺贈につき承認または放棄をしておらず、また、遺贈義務者その他の利害関係人からそれにつき催告もなければ、受遺者の相続人が、いつでも受遺相続分を承認または放棄することができるということは、当然です。

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遺贈の承認・放棄の取消、無効

総説

① 遺贈の承認および放棄は、これを取消すことができません。この場合の取り消しは撤回の意味です。いったん特定遺贈につき、承認または放棄をすれば、任意の撤回は許されません。遺贈義務者その他の利害関係人を保護するため、任意の撤回が許されないのは当然です。

② 任意の撤回は許されませんが、遺贈の承認・放棄が詐欺もしくは脅迫によってなされたときや、受遺者が制限能力者であるにもかかわらず、単独で承認・放棄をしているときは、取消ができます。

③ 受遺者が、成年被後見人のときは、成年後見人の同意を得ているときも、一般的に取消は可能と解されています。

④ これらは、相続における承認・放棄の取消と同趣旨であり、取り消し権は追認可能なときから6ヶ月、承認または放棄のときから10年を経過すれば消滅します。

 

特定遺贈の承認・放棄の取消方法

① 特定遺贈の承認・放棄は、遺贈義務者(遺言執行者を含む)に対する意思表示で可能です。

② したがって、取消にあたっても家庭裁判所に対する申述を必要とせず、遺贈義務者に対する意思表示で効力を発します。

③ 遺贈義務者が数人あるとき、そのひとりに対する承認または放棄の意思表示が、他の遺贈義務者に対し絶対的効力を持つと解する以上、ひとりに対する取消の意思表示も、絶対的効力を持つといってもいいでしょう。

④ 親族の規定による取消とは、後見監督人がある場合に、未成年者後見人がその同意を得ずに、未成年者を代理して遺贈の承認または放棄をした場合や、未成年者が自ら承認・放棄をするのに同意を与え、未成年者が承認または放棄をした場合、などです。

⑤ 受贈者のなした遺贈の放棄ですが、遺贈の放棄以前の受像者の債権者は、債権者取消権行使の要件を備える限り、放棄の取消を裁判所に請求することができると解されます。

 

承認・放棄の無効

① 民法の規定は、特定遺贈の承認・放棄の取消に触れるだけであって、承認・放棄の無効に触れてはいません。

② 承認・放棄の意思の不存在のときは、当然無効であり、無効のためになんらの意思表示を必要としません。

③ そうすると、いわば欠陥の小さい取消については、少なくとも遺贈義務者に対する取消の意思表示がなければ、前になされた遺贈の承認・放棄は、そのまま効力を持ちます。

④ しかし、欠陥の大きい無効の場合には、なんらの意思表示をも必要とせずに、前になされた承認・放棄の無効を主張できるということになり、取消と無効の間に若干の矛盾を生ずることになりますが、やむを得ないことと言わなければなりません。

 

包括受遺者の権利・義務

① 遺贈が包括名義でなされる場合、すなわち、遺産の全部またはその一定割合を与える旨の遺贈を包括遺贈といいます。この遺贈を受ける者を包括受遺者といいます。

② 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有すると規定されたため、包括遺贈は被相続人(=遺言者)による被相続人の指定に極めて類似したものとなっています。

③ しかしながら、包括遺贈も遺贈の一対応にすぎず、包括受遺者を相続人そのものということはできませんから、包括受遺者が相続人とまったく同一の権利・義務を有すると解することはできないでしょう。

 

包括受遺と相続との共通性

① 包括受遺者は、当然かつ包括的に遺産を承継します。遺贈の効力が生ずると、包括受遺者は、遺贈があったことを知ると否とにかかわりなく、遺贈する割合の権利・義務(遺言者の一身に専属したものを除く)を当然に取得します。

② 特定遺贈の場合とは異なり、包括遺贈が物権的効力を有することについては、異論がありません。相続人と同じく、占有および瑕疵をも承継します。

③ 相続の場合と同様に、包括遺贈による農地の移転については、農業委員会(または都道府県知事)の許可を受ける必要がありません。

④ 相続人または他の包括受遺者(共同受遺者)が、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をしたときは、その行為は無効です。遺言執行者や相続人と並んで、包括受遺者もその無効を主張することができます。

⑤ 包括受遺者は、債務をも承継します。なお、特定遺贈がなされている場合は、包括受遺者もその義務者となります。遺贈の放棄または限定承認をしない限り、包括受遺者は、無限責任を負うことになります。ただし、遺言者が、これを免除または軽減できます。

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包括遺贈と相続の差異

総説

① 包括受遺者の法的地位は、概ね相続人のそれに類似します。しかし、包括受遺者はあくまで相続人ではないから、依然として両者の差異は残ります。

② なお、包括受遺者が相続人でもあるときは、相続人としての権利義務を失うわけではないことは言うまでもありません。

 

法人について

① 法人は相続人とはなりえませんが、包括受遺者にはなりえます。

② いわゆる権利能力のない社団・財団はもちろん、その他の団体や施設も、代表者または財産管理人さえはっきりしているならば、包括受遺者足りうると解すべきでしょう。

 

遺留分について

① 包括受遺者が遺留分を有するわけではないことは明らかであります。

② したがって、たとえば、受遺分の二分の一以上を侵害するような特定遺贈があった場合でも包括受遺者は減殺請求をすることはできません。

③ その意味で、特定遺贈は包括遺贈に優先することになります。

 

遺贈の効力発生前の受遺者の死亡など

① 遺贈の効力が生じる以前に受遺者が死亡したときは、遺贈は効力を生じないのであり、代襲の問題は起こりません。

② 遺贈の放棄があった場合や受遺欠格の場合も同様です。

③ このような場合に、遺言者は、受遺者の相続人へ遺贈する旨を定めることができますが、それは、受遺者の死亡などを停止条件とする補充遺贈であって、「代襲受遺」ではありません。

④ 相続人または他の包括受遺者が、相続または遺贈を放棄した場合、放棄された部分は、相続人の相続分には添加されるが、包括受遺者の受遺分には添加されません。

 

共同相続人の一人の相続分の譲渡

① 共同相続人の一人が、その相続分を、第三者に譲渡したときは、他の共同相続人は相続分取戻権を有するが、包括受遺者はそこに含まれないと解するべきでしょう。

② なぜなら、この制度は、もともと遺産はできるだけ家族共同体内部の者に承継させるという趣旨に基づくものだからです。

③ 現在、この制度の存在理由事態が疑問とされていますが、そうだとすると政策的配慮からしても、上記のように解するのが妥当でしょう。

保険金受取人

保険金受取人として「相続人」という指定がなされている場合、包括受遺者はそこにいわゆる「相続人」には含まれないというのが最高裁判所の判例です。

 

遺産中の登記・登録を要する財産について

① 遺産中に、登記・登録を要する財産が含まれている場合、その登記・登録の手続きはどうなるでしょうか。

② 相続による登記は、相続を証する書面(戸籍謄本・遺産分割協議書など)を添えて、登記権利者(相続人)のみで、その申請をすることができます。

③ これに対して、遺贈による登記は、特定遺贈であれ包括遺贈であれ、登記権利者である受遺者と登記義務者である遺言執行者または相続人との共同申請によらなければならない、というのが実務の取り扱いだったようです。判例もこれを承認しました。

④ 包括遺贈は、当然にその効力を生じ、履行の問題を残さないということと、共同申請ということと理論的にどう説明するのでしょうか。

⑤ また、相続人不存在の場合の全遺産の包括受遺者も、登記をするにはそれに先立ち遺言執行者の選任を求めなければならないとするのは、果たして妥当か、といった点でやや疑問が残るところです。

 

包括遺贈による不動産取得の対抗の問題について

① 包括遺贈による不動産取得の対抗の問題についても、相続とは違った処理がなされるべきでしょう。すなわち、相続人が相続による不動産取得を第三者(表見相続人からの譲受人など)に対抗するには登記を必要としませんが、包括受遺者は、登記がない限り、第三者(相続人からの譲受人や差押債権者など)にその不動産に対する持分の取得を対抗することができないと解すべきです。

② その理由は、要するに、遺贈は相続と違って遺言者の意思による処分だからということに尽きるのですが、実質論としては第三者が遺贈の有無やその効力を確認することは相続開始の事実および相続人の範囲を確認するよりも困難だとみられるから、相続の場合以上に第三者を保護する必要がある、という点があげられると思います。

③ この場合、包括遺贈が、物権的効力を有することも上記のような解釈の妨げとなるわけではありません。なぜなら、不動産の特定遺贈を登記なくして対抗しえないことについては、物権的効力説にたつ判例学説もこれを否定していないからです。

④ 包括遺贈を第三者に対抗するためには、登記を必要とするといっても、現行登記法は、包括遺贈に対応する特別の登記手続きを用意していません。そのため、登記実務は、包括遺贈に対抗力を与えるために、包括遺贈の目的とされた個々の相続財産について、個別的に共有登記をするという方法をとっています。

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受遺者の担保請求権

総説

民法第991条は、「受遺者は遺贈が弁済期にいたらない間は、遺贈義務者に対して、相当の担保を請求することができる。停止条件附の遺贈についてその条件の成否が未定である間も、同様である。」と規定しています。

 

本条の異議

① 本条は、停止条件付または始期付の遺贈において、受遺者が遺贈義務者に対して、相当の担保を請求しうる旨を定めています。

② 弁済期が遺言の効力発生時より後になる場合には、弁済期において、遺贈義務者が無資力化する恐れがあるため、受遺者を特に保護する趣旨で、この規定が設けられたのです。

③ 条件付権利者は民法総則によって保護されてはいますが、本条はその趣旨をさらに徹底させたものです。

④ 立法者の質疑応答に対して、次のような受け答えがあります。
質問者が「受遺者には保護が厚くて結構だが、相続人にとって酷なことではありませんか。」と質問したことに対して、立法者は次のように答えています。すなわち、「相続人はそれだけの義務は履行すべきものと覚悟しているのですから、すぐに相当の担保を供すればいいでしょう。条件付の場合は、供託さえしておけばよいのです。供託すれば、担保になるからそれでよいのです。必ずしもこれが酷であるということはありません。」と説明しています。

 

適用について

① 本条は、一般に、特定受遺者にのみ関する規定と解されています。しかし、立法者は本条の適用を、特定受遺者の場合に限定する意図はもっていなかったように思われる、と解する考えもあります。

② 実質的にみても、本条は、包括受遺者の場合にも、適用されて良いのではないかという考えがあります。なぜなら、条件成就前、または期限到来前の包括受遺者は、遺産分割の協議または審判の当事者たりえないし、さりとて他の相続人や包括受遺者のなす遺産分割を阻止すべき権限を有するわけではないからです。

③ そうして、遺産分割後、遺贈義務者たる相続人や包括受遺者が無資力化する恐れがあることは、特定遺贈であろうと包括遺贈であろうと異なるところはないのです。そうだとすると、本条を特定受遺者のみに関する規定と解するのは、狭きに失するものというべきだとしています。

④ 本条は遺言解釈の補充規定であり、遺言者がこれと異なる意思を表示したときは、遺言者の意思が優先します。明文の規定はありませんが、そのように解するのが当然かと思います。

 

担保の内容

① 受遺者が請求しうる担保の内容や種類については、特に制限がありません。

② 「相当」なものでありさえすれば、受遺者が、保証人を立てさせること、質権・抵当権を設定させることなど、いかなる担保を請求することも可能です。

③ 特定物遺贈の場合、その目的物自体に、質権や抵当権を設定させることもできます。特定不動産の場合には、所有権移転保全のための仮登記を求めることもできます。

④ 「相当の」担保というのは、受遺者の権利を保全するのに、必要かつ十分な程度の担保のことですが、その判断は終局的には裁判所にこれを委ねるほかにはないでしょう。

 

請求の方法

① 請求の相手方は、遺贈義務者たる相続人または(および)包括受遺者です。

② 相手方が数人あるときは、その各人に対して担保の請求ができるが、その場合には、各人の相続分または受遺分に応じる限度でしか、これを請求することができません。

③ 担保供与につき、共同相続人に連帯責任を負わせる旨の遺言意思ありと解釈することが望ましいとする見解もあります。これに対して、遺言の文言上明らかでない限り、分割責任と解するほかないと思われる考えもあります。

④ 相手方が、担保の請求に応じないとき、または担保の程度・方法につき協議が整わないときは、受遺者は裁判により担保の供与を請求することができます。

⑤ これは、家庭裁判所の審判事項ではないので、通常の訴訟手続きによるほかないと解されています。ただし、遺産分割審判に際して、家庭裁判所が、条件成就前または期限到来前の受遺者を利害関係人として、審判手続きに参加させることは認めてよいと解されてよいでしょう。

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受遺者の果実取得権

総説

民法第992条は、「受遺者は、遺贈の履行を請求することができるときから果実を取得する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。」と規定しています。

 

本条の異議

① 本条は、特定受遺者の果実収取権取得の時期に関する規定です。特定遺贈の場合に限定する旨の文言はありませんが、事柄の性質上、そのように解して差し支えないとされています。

② 「遺贈の履行を請求することができるとき」というのは、通常の遺贈においては遺言者死亡のときです。また、停止条件付遺贈においては条件成就のときです。そして、始期付遺贈においては期限到来のときです。

③ すなわち、これらのときに、遺贈の目的たるものまたは権利は受遺者に移転し、それに伴って受遺者は果実収取権をも取得するというわけです。

 

果実収取権の内容

① 本条にいわゆる果実とは、「預金利子、土地建物の賃料、株式の配当などを総称」するとされています。

② 株式の配当については、判例があります。法定果実だけでなく天然果実も含まれることは、当然とされています。

③ 遺贈の目的たる物または権利から現に生じつつある果実の他、「生ずべかりし果実」もこれに含まれるかについては争いがあります。通説は、これを否定的に解しています。

④ それは、そのように解するのが遺言者の通常の意思に合致する、という理由に基づくからです。すなわち、遺言者は、死亡当時における財産を処分する意思を有するのが通常ですから、遺贈の目的である財産は、その遺言が効力を発生する当時における現状で遺贈されるものと推定すべきです。そして、現に果実が生じているならば果実もともに受遺者に引渡すべきであり、果実が生じていないならば目的たる財産をそのまま受遺者に引渡せばよい、というわけです。

⑤ そこで、たとえば遺贈の目的が無利息の預金の場合は、受遺者は法定利息も請求できないし、遺言者や相続人が継続使用している家屋のように家賃を生んでいない家屋が遺贈された場合は、家賃相当額を請求する権利もない、と解されることになります。これらの考えに対して、原則的にはそれでよいとしても、受遺者および遺贈義務者間の公平という見地からみて、遺贈義務者が遺贈の存在を知ったとき、ないし、遅くとも遺贈義務の履行請求を受けたとき以降については、受遺者は「生ずべかりし果実」ないし遅延賠償を求める権利を有する、と解すべきではあるまいかとの考えがあります。

⑥ なぜなら、通説のように解すると、遺贈義務の履行を引き延ばすことによって、遺贈義務者は、受遺者の犠牲において、事実上利益を受けることが可能となるからです。

⑦ そうして、その反面、遺贈義務者が遺贈の存在を知らない間の果実は、たとえ現に生じつつあるものであっても受遺者にこれを引き渡す必要はない、と解すべきであるとされています。

⑧ そうでないと、受遺者が長期にわたって遺贈の目的物の引渡しを請求せず、後になって一度に過去の果実まで含めて引渡しを求めた場合に、遺贈義務者にとって過酷な結果になるからと解しています。

⑨ 遺贈の目的が不特定物の場合は、目的物の特定によりその権利が受遺者に移転します。通説によれば、果実収取権もこのときから受遺者に帰属することになると思われます。しかし、この場合にも、遺贈義務者が悪意のときに限り、受遺者への果実収取権帰属の時期を遡らせて考えてもよいのではないか、との考えがあります。

⑩ なお、以上はすべて遺言者の意思が明らかでない場合の取り扱いです。遺言に表示された遺言者の意思がこれと異なる場合には、もちろん遺言者の意思が優先します。

⑪ たとえば、「引渡し以前に生じた果実は受遺者に与えなくてもよい」の場合がこれにあたります。また、「現実に生じた果実のみを、受遺者は取得する」といった遺言が、これにあたるでしょう。

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遺贈義務者の費用償還請求権

総説

民法第993条は、「①遺贈義務者が遺言者の死亡後に遺贈の目的物について費用を出したときは、第299条の規定を準用する。②果実を収取するために出した通常の必要費は果実の価格を超えない限度で、その償還を請求することができる。」と、規定しています。

 

本条の異議

① 本条は、遺贈義務者が、遺贈の目的物について支出した費用および果実収取のために要した費用の償還請求権に関する規定です。

② 本条は、遺贈の目的物がすでに特定されていることを前提とするから、包括遺贈について本条が適用されません。

③ また、特定遺贈のうちでも不特定物遺贈については、やはり本条は適用されません。ただし、目的物が特定した後は、本条の適用を認めるべきだという学説が有力です。

④ なお、明文上の定めはありませんが、遺言者が遺言で別段の意思表示をしたときは、その意思が本条の規定に優先するものと解すべきでしょう。

 

遺贈の目的物に関する費用の償還請求権

① これについては、留置権者の費用償還請求権に関する民法第299条が準用されます。すなわち、遺贈義務者が遺贈の目的物について必要費(家屋の修理費用や税金など)を出したときは、受遺者に対してその全額の償還を請求することができます。

② また、有益費(家屋の改良費など)を出したときは、その価格の増加が現存する場合に限り、受遺者の選択にしたがって、その費やした金額または増加額の償還を請求することができます。

③ なお、有益費の償還については、裁判所は、受遺者からの請求により、相当の期限を許与することができます。その場合には、遺贈義務者は、有益費の償還がなされなくても遺贈の履行を拒むことができません。

 

償還できる費用について

① 受遺者に対して請求できるのは、「遺言者の死亡後に」支出した費用のみです。

② 遺贈義務者が、遺言者の死亡前に遺贈の目的物について費用を支出したことがあっても、それは相続財産の負担になるのであって、受遺者に対してこれを請求することはできません。

③ 遺言者死亡後の費用は、すべて償還請求できるのでしょうか。
問題は、条件付または期限付き遺贈の場合において、遺言者死亡後かつ条件成就前または期限到来前に支出した費用に関して生じます。

④ 本条においてだけ、遺言者死亡の場合のみが規定されているところを見ると、遺言者死亡後に支出した費用は、すべて償還請求の対象になると解するのが自然のように見えます。

⑤ しかし、条件成就前または期限到来前の遺贈目的物が、相続人に属することは疑いなく、したがってその間の果実収取権も、受遺者に帰属するわけでないことを考え合わせれば、費用償還についてだけ遺言者死亡の場合に限定することの合理的根拠はないようです。

⑥ 本条が、「遺言者の死亡後」と規定したのは、遺贈の効力発生の通常の場合を予想したからにすぎないので、条件成就前または期限到来前の費用の償還請求まで認める趣旨ではない、と解すべきでしょうか。

 

果実収取費用の償還請求権

① 果実収取権の帰属の時期は、第992条の規定するところでありますが、これにより受遺者に果実収取権が帰属した後、遺贈義務者が果実を収取するためにの費用を支出したときは、「通常の必要費」の範囲内、かつ「果実の価格を超えない限度」でその償還を受遺者に対して請求することができます。

② 「通常の」必要費というのは、果実収取のために現実に支出した費用ではなく、通常必要とされる程度の費用という意味なのでしょう。

③ 「果実の価格を超えない限度」でならば、現実に支出した費用の償還を請求できると解する余地もないわけではないでしょう。

④ しかし、ことさら「通常の」必要費と規定している以上、やはり通常要すべき費用と解するほかはないでしょう。

⑤ 果実を収取するための費用とは、例えば「収穫を得るためにする耕作の費用」や「家賃収受のために雇った集金人の報酬」などです。

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