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特別の方式遺言法文詳解

各項目をクリックして、ご覧ください。

  1. 死亡危急者遺言
  2. 死亡危急者遺言の証人押印
  3. 死亡危急者遺言の確認
  4. 伝染病隔離者の遺言
  5. 伝染病隔離者遺言の立会い
  6. 船舶者遺言

 

死亡危急者遺言

① 疾病その他の理由によって、死亡の危急に迫った者について、緩和された方式による遺言を可能とするための規定があります。これは、遺言の趣旨を口授して行う口授型の遺言方式であり、口授を受けた証人が筆記して、遺言者および他の証人に読み聞かせ、筆記の正確さを承認をさせるなど、公正証書遺言に似た手続きを踏むが、公証人が関与していません。よって、この方法による遺言は、家庭裁判所の確認を得なければ効力を有しません。

 

② 民法の旧976条は、公正証書遺言の場合と同じく、遺言者の口授と、口授を受けた証人による読み聞かせを要件としていました。が、1999年改正法によって、通訳人の通訳による申述などの方法が可能となり、読み聞かせに代えて閲覧による筆記内容の確認も認められることになりました。

 

③ 疾病その他の事由によって、死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人3人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、遺言をすることができます。この場合には、その口授を受けた者がこれを筆記して、遺言者および他の証人に読み聞かせ、または閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、各証人の署名および押印が必要です。

 

④ 署名は、証人自身がすることが必要であるとされいますが(判例)、学説にはこれに批判的な見解も見られます。

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死亡危急者遺言の証人押印

① 死亡危急者遺言の証人の押印は、拇印でも足りますが、他人に指示して代わりに印を押させても差し支えありません。また署名・押印は、遺言者の面前で必ず行わなければならないものではなく、遺言書作成の一連の過程にしたがって遅滞なくなされたときは、署名・押印によって筆記の正確性を担保しようとする民法第976条の趣旨を害するものではないので、遺言者のいない場所で署名・押印した場合でも、遺言の効力を認めることを妨げないとされています。

 

② なお、証人の署名・押印は、遺言者の生存中にしなければならないとする判例があります。学説は、読み聞かせと筆記の正確さの承認がなされた後、証人の署名・押印前に遺言者が死亡してもそのまま一連の行為として署名・押印によって完結されたときは、遺言の成立を認めるべきであると批判しています。

 

③ 遺言をしようとする者が、口のきけない者である場合には、証人の前で遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して、口授に代えなければなりません。遺言者または証人が耳の聞こえない者であるときは、筆記内容を通訳人による通訳により伝えて、これに対する読み聞かせに代えることができます。

 

④ 死亡危急者遺言では、遺言書遺言をした日付ないしその証書の作成日付を記載することは有効要件ではなく、遺言書に作成の日として記載された日付が正確性を欠いていても、遺言は無効とはなりません。(判例)。また、死亡の危急に迫った者のための特別な方式であるから、遺言者の署名・押印も必要とはされていません。

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死亡危急者遺言の確認

① 死亡危急者遺言については、作成した遺言書は、遺言の日から20日以内に、証人の一人または利害関係人から家庭裁判所に請求して確認の審判を得なければなりません。確認の手続きは、遺言が遺言者の真意に出たものであるかどうかを判定するためのものであるが、方式違背などの理由によって遺言の効力を争う場合は、別途民事訴訟法の手続きによります。

 

② 死亡危急者遺言の確認は、遺言の有効性自体を確定させることではなく、その最終的判断については、既判力をもって効力を確定する判決手続きに委ねるべきことを考慮すると、遺言の確認にあたり遺言者の真意について家庭裁判所が得るべき心証の程度は、確信の程度におよぶ必要はありません。当該遺言が、一応遺言者の真意にかなうと判断される程度の緩和された心証で足り、この程度の心証が得られた場合には、家庭裁判所は、当該遺言を確認しなければならないものとされています。

 

③ 死亡危急者遺言は、まさに死せんとする者のための特別に簡易な方法であるから、その者が緊急事態を脱し普通の方式によって遺言をすることができるようになった時から、6ヶ月間生存するときは、その効力を生じません。

 

④ なお判例を一つ紹介します。証人の一人(医師)が、弁護士が遺言者の配偶者から聴取した内容を基に作成した遺言書の草案を、一項目ずつ読み上げたところ遺言者はその都度頷きながら「はい」と返答し、最後に、これで遺言書を作って良いかの証人の質問に対し、「よくわかりました。よろしくお願いします。」と答えた場合は、口授にあたるとされました。(最高裁判所判例平成11年)。

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伝染病隔離者の遺言

① 伝染病隔離者の遺言についても、規定があります。すなわち、伝染病のために隔離された者は、警察官一人および証人一人以上の立会いのもとで遺言書を作ることができます。この方式は、通常の生活場所とはかけ離れた場所にいる者のために、定められた特別の方式である隔絶地遺言のひとつです。公証人の関与が必要な公正証書遺言および秘密証書遺言が困難なことに対する代替措置とも考えられます。

 

② この伝染病隔離者の遺言は、警察官が関与していることから死亡危急者遺言とは異なり、家庭裁判所の確認を必要とはしませんが、検認は必要です。また、遺言者が、普通の方式によって遺言をすることができるようになったときから、6ヶ月生存するときはその効力を生じません。

 

③ 伝染病隔離者遺言の要件として第一に、伝染病のため行政処分によって交通を絶たれた場所にいることが必要です。民法第977条は、伝染病を理由とする行政処分にもとづく隔離を想定しているが、これに限らず、一般社会との交通が事実上または法律上、自由になし得ない場所にある者すべてが適用対象になると一般に解されています。刑務所内にいる者、地震や洪水などによる交通遮断の場合などです。死亡の危急に迫っている者であるかどうかは、本条の適用については関係ありません。

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伝染病隔離者遺言の立会い

① 伝染病隔離者遺言の第二の要件として、警察官および証人一人以上の立会いが必要です。警察官については、かつてはこれを警部補以上に限るとする説が通説とされたが、現在では巡査(警察官の階級で最下級の者)も含むとする説を、支持する者が多いようです。

 

② 伝染病隔離者遺言の第三の要件として、遺言書の作成および遺言者らの署名・押印が必要です。遺言者は遺言書を作らなければなりません。自筆であることは必要ではないが、口頭での遺言は認められません。日付の記載は、必ずしも必要ではありません。民法第977条に言う隔離状況にあった時期に作成された遺言書であることは、立会人である警察官がその職務として証明すべきものであります。

 

③ 遺言者、筆者、立ち会った警察官および証人は、各自が遺言書に署名し、押印します。署名・押印することができない者がある場合には、立会人(警察官)または証人が、その事由を付記しなければなりません。

 

④ 次に在船者の特別の方式の遺言についてご説明します。船舶中にある者は、船長または事務員一人および証人二人以上の立会いをもって遺言書を作ることができます。これも隔絶地遺言の一種です。

 

⑤ 船舶中にある者は、自筆証書遺言をすることは妨げられないものの、公正証書遺言および秘密証書遺言をすることは通常できません。そこで準公的な遺言作成の手段として特に認められたものです。公の信用のある船長などが関与しているので、家庭裁判所の確認は必要でないが、検認は必要です。

 

⑥ また、この方式による遺言は、遺言者が上陸して普通の方式によって遺言をすることができるようになったときから6ヶ月生存するときは、その効力を生じません。

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船舶者遺言

① 船舶者遺言の要件として、「船舶中にある者」を要しますが、本条にいう船舶とは、主として航海のように供されるものを言います。しかし、内海、湖川、港湾のみを航行する船舶については、本条の適用を認める説と否定する説があります。

② 船舶法では、小型船舶およびろかい舟(総トン数20トン未満の船舶および端舟その他櫓櫂のみをもって運転し、または主として櫓櫂をもって運転する舟)を一般の船舶とは区別していますが、本条の適用については、船舶の規模などではなく、容易に上陸して、普通の方式による遺言をすることができるような航行常況にあったかどうかを基準として、考えればよいでしょう。

③ なお、当該船舶が航行中であるか、港湾に碇泊中であるかを問わないと解されています。また、船員であるか、乗客ないし一時的乗船者(不法乗船者も含む)であるかも問いません。船舶中にある者と同様に隔離された空間にあって、普通の方式の遺言が困難な状況にある者、たとえば飛行機内にいる者についても本条の類推適用を認めることができます。

④ 在船中遺言の要件として、「船長または事務員一人および証人二人以上の立会い」が必要です。船長または事務員は、その職責によって在船者の遺言に立ち会えます。事務員とは、船長以外の船舶職員を言います。船員法に職員として定められている航海士、機関長、機関士、通信長、通信士および国土交通省令に定めるその他の海員をいうとされますが、河川・湖を航行する船も含まれると解されるので、字義通りの海員とは限られません。

⑤ 在船者遺言の要件として、第三に「遺言書の作成および遺言者らの署名・押印」が必要です。遺言者遺言書を作らなければなりません。自筆であることは必要ではありませんが、口頭での遺言は認められていません。

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