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墳墓・葬式費用・香典等の相続問題 越谷の相続・遺言・相続放棄などのご相談は美馬司法書士・行政書士事務所
一般的には、被相続人の死亡により、被相続人に属していた一切の権利義務が、包括的に相続人に承継されます(民法第896条)。
問題は墓の承継です。民法第897条は、墓を含めた祭祀財産について、特別の承継ルールを定めています。
1.系譜、祭具及び墳墓の所有権は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定があるときは、その者が承継する。
2.慣習が明白でないときは、家庭裁判所が定める。
祭祀財産
系譜とは、家計図・過去帳など祖先以来の系統を示すものです。
祭具とは、位牌・仏壇・仏具・神棚などの祭祀・礼拝の用に供するものです。
墳墓は、墓石・墓碑だけでなく、その所在する土地(墓地)の所有権や墓地使用権(大阪高裁決定昭和59,10,15)を含みます。
ただし、墳墓に含まれる墓地の範囲は、墓石などが存在する墳墓と密接不可分な範囲に限られます(広島高裁判例平成12,8,25)。
祭祀財産の承継者
祭祀財産は「祭祀を主宰すべき者」が承継します。祭祀主宰者は、
- 被相続人の指定で決定します。
- 指定がない時はその地方の慣習にしたがいます。
- 指定もなく慣習も明らかでないときは、家庭裁判所の審判で定まります。
祭祀主宰者の資格に制約はありません。相続人か否か、親族関係の有無、氏の異同などは問わないとされています(大阪高裁決定昭和24,10,29)。
祭祀主宰者は、通常は1人です(大阪高裁決定昭和59,10,15)。
しかし、特段の事情があれば、2人を共同の承継者とすることも認められています(仙台家裁審判昭和54,12,25)。
系譜・祭具・墳墓の承継者を、それぞれ別人とすることもできます(東京家裁審判昭和42,10,12)。
祭祀財産承継者の問題点
被相続人が祭祀承継者を指定する方法には限定がありません。生前行為・遺言・書面・口頭・明示・黙示を問いません。外部からその意思が推認されれば足りる、とされています。
祭祀承継者が慣習によって定められる場合、その慣習は被相続人の住所地の慣習を指しています。しかし、出身地や職業に特有の慣習があれば、そちらを優先します。
家庭裁判所が指定する際は、諸々の事項を総合して判断します。たとえば、被相続人との身分関係、過去の生活関係・生活感情の緊密度、承継者の祭祀主宰の意思や能力、利害関係人の意見などです(大阪高裁決定昭和59,10,15)。
祭祀は、死者への愛情、感謝の心情からなされるものです。血縁よりも、実際上こうした心情をより強く有する者、選ぶべきとされています。名古屋高裁決定昭和37,4,10は、「生前に、父と生計を異にしていた長男らでなく、父と同居しともに農業に従事した次女」を、選びました。
相続人の合意により承継者を指定できるかは、裁判例が分かれます。
肯定例もありますが(東京地裁判例昭和62,4,22)、否定例として「被相続人がそのように指定した場合を除き認めない」との判例もあります(広島高裁判例平成12,8,25)。
祭祀財産承継者の地位
祭祀財産の承継には、相続の承認や放棄の規定がありません。したがって承継の放棄や辞退はできません。祭祀主宰を理由に、相続についての特典(特別の相続分や祭祀料を要求すること)も認められません(東京高裁決定昭和28,9,4)。
ただし被相続人が、祭祀主宰者に相続分の指定をしたり、遺贈や生前贈与をする事は差し支えありません。
離婚による復氏など一定の場合は、祭祀財産承継者を定めなおす必要があります。
遺体・遺骨の承継
かつて家督相続時代の判例に、遺骨は相続人の所有に帰するとしたものがあります(大審院判決大正10,7,25)。
しかし、共同相続を本則とする現在、この考えは採用できません。とはいえその管理などを共同所有の理論で取り扱うことは、私たちの感情にそぐわないものです。
遺体・遺骨の承継は、相続とは別に考えるべきと解されています。帰属者は喪主とする考えもありますが、判例は祭祀承継者としています(最高裁判例平成1,7,18)。
その所有権は、性質上埋葬管理と祭祀供養の目的の範囲内に限られると解されています。したがって、他の一般の有体物とは異なり、遺体・遺骨の放棄は不可としています(大審院判例昭和2,5,27)。
葬式費用負担と香典
葬式費用の負担については、全相続人共同負担説・相続財産負担説・喪主負担説など、裁判例・学説とも分かれています。
香典は、葬式費用等の、遺族側の負担の軽減のための贈与と解されています。したがって、葬式費用に充当することは、問題ありません。
ただ、余剰が出たときに、相続財産に準じて分割対象とするか否かは、学説上も争いがあるようで、確定した見解は出ていません。
相続財産 は、下記の項目をご紹介しています
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