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相続遺言と代襲相続 越谷の相続・遺言・相続放棄などのご相談は美馬司法書士・行政書士事務所
遺言者よりも相続人が先に死亡
相続させる旨の遺言により、相続財産を相続する者または遺言により相続分の指定をされた者が、遺言者よりも先に死亡した場合において、その代襲相続人がその相続財産または指定相続分を、代襲相続することができるか問題です。
相続させる旨の遺言
相続させる旨の遺言は、法定相続人に対して財産を取得させる場合に限ります。遺言で法定相続人以外の者に財産を取得させるには、遺贈によるほかありません。
遺言書において、「Aの所有する財産全部を子Bに相続させる」旨の遺言に対し、「特定の財産を特定の相続人に相続させる」旨の遺言(たとえば、「甲不動産は、長男Aに相続させる」旨の遺言)を「特定財産承継遺言」といいます。
この「特定財産承継遺言」は、原則として遺産分割方法の指定であり、被相続人死亡のときにただちに特定財産(上記の例では、甲不動産)が当該相続人に相続により承継されるものと認められます。そして、当該相続人は単独で甲不動産の所有権移転登記手続き(登記原因は「相続」)をすることができます。
なお、平成30年改正前民法下においては、不動産を相続した相続人は、登記なくして当該不動産の所有権全部の取得を第三者に対抗できました。
しかし、平成30年改正民法899条の2第1項は、相続による権利(不動産、動産、知的財産権など)の承継は、遺産の分割および遺言の場合を含め、法定相続分を超える分については、登記登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができないことを規定し、遺産分割、遺贈と同様に対抗要件具備の先後によって優劣を決することになりました。
相続分の指定
民法902条1項は、「被相続人は、・・・・遺言で、共同相続人の相続分を定め、またこれを定めることを第三者に委託することができる」と規定しています。
これを「相続分の指定」といい、必ず遺言で行うことを要します。これにより、各相続人が指定された相続分を「指定相続分」といいます。
遺言書に「遺言者の有する財産の5分の3を長男Cに与える」と記載された場合は、相続分の指定の趣旨か、包括遺贈の趣旨か判然としないことがあります。
したがって、相続分の指定の場合には、次のように記載すべきです。
遺言者は、次のとおり相続分を指定する。
妻B(昭和〇年〇月〇日生) 5分の2
長男C(昭和〇年〇月〇日生) 5分の3
遺言と代襲相続の考えられる事例の検討
裁判例を通して、事例を検討しましょう。
父Aが、「Aの所有する財産全部を子Cに相続させる」旨の遺言をしたが、子CがAよりも先に死亡した場合、Cの子E(Aの孫)がAの遺産を代襲相続することができるでしょうか。
最高裁平成23年2月22日判決は、孫Eの代襲相続性を原則として否定しています。
同判決はこのような相続させる旨の遺言をした遺言者は、通常、遺言における特定の推定相続人に当該遺産を取得させる意思を有するにとどまるものと解されます。
したがって、当該「相続させる」旨の遺言にかかる条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情および遺言者のおかれていた状況などから、遺言者が、当該推定相続人の代襲者(E)その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情がない限り、その効力を生ずることはありません、と判示しました。
このように遺言の効力が否定される場合に備えて、予備的な遺言(たとえば、「Cが遺言者の死亡以前に死亡している場合には、Cの長男Eに財産全部を相続させる」旨の遺言)を付加することを考慮すべきです。
父Aが遺言により、妻Bに5分の1、長男Cに5分の3、次男Dに5分の1と指定した場合において、長男Cが父Aよりも先に死亡した場合、Cの子E(代襲相続人)が、Cの上記指定相続分5分の3を代襲相続でき切るでしょうか。
この点に関し、相続分の指定についての代襲相続人指定に関する見解として、Eの代襲相続を認める考えもあります。
しかし、相続分の指定の場合においても、遺言者は、通常、遺言時における特定の推定相続人に、特定の相続分を取得させる意思を有するにとどまるものと考えられます。そうすると、上記最高裁平成23年2月22日判決と同様に、本件遺言条項と本件遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情および遺言者のおかれていた状況などから、遺言者がCの子Eの代襲相続を認める意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、遺言の効力を生ずることはないと解され、原則としてEの代襲相続性を否定すべきかと思われます。
したがって、この場合も予備的な遺言を付加することを考慮すべきかと思います。
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