相続人の廃除(判例)

千間台駅前大学の、居眠教授の民法相続法ゼミを始めます。今日は「相続人の廃除」について質問をどんどんしますので、居眠りはできませんよ。

教授:A君、相続人の廃除とはなんですか。
A君:被相続人の意思によって相続人の相続資格を奪う制度です。

教授:B君、なぜ、相続人の廃除などという制度があるのですか。
B君:相続人の廃除の制度は、被相続人の意思を尊重して認められたのです。
すなわち、被相続人が推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者)に相続させたくない場合に、かつ、そのことが当然である場合に、被相続人の意思によって相続資格を奪うのです。
詐欺・強迫により、被相続人に相続に関する遺言をさせ、または撤回・取消し・変更をさせた者も相続欠格人とされています。
これは、被相続人の遺言の自由を侵害する重大な違法行為だからです。

教授:続いてC君、相続欠格と相続人の廃除の違いはなんですか。
C君:相続欠格は、法律上当然に相続資格を奪うもので、手続は必要ありません。
一方、相続人の廃除は、被相続人の意思に基づき一定の手続きで廃除されない限り、相続資格は奪われません。

教授:D君、被相続人を虐待した者でも、当然には相続資格を奪われないのですか。
D君:はい。被相続人から廃除されない限り、相続人となることができます。

教授:E君、相続欠格の対象となる者は、すべての推定相続人ですが、相続人の廃除も同様でしょうか。
E君:いいえ。相続人の廃除の対象は【遺留分を有する推定相続人のみ】です。

「遺留分」については、こちらをごらんください

教授:ということは、F君、遺留分を有しない兄弟姉妹は、廃除の対象とならないのですか。
F君:はい。そのとおりです。

教授:次G君、それでは、被相続人の兄弟姉妹が被相続人に虐待を加えた場合でも、相続人資格を奪えず、相続人の廃除の趣旨に反するのではありませんか。
G君:いいえ。そういうことはありません。
遺留分を有しない推定相続人、すなわち兄弟姉妹に相続財産を与えたくないと考えた場合には、次の方法があります。

  1. 遺言で、これらの者に対する相続分を零とする。
  2. 全財産を、第三者に贈与したり遺贈する。

これらの方法で、兄弟姉妹に相続させずにすみ、相続人の廃除と同様の効果となります。

教授:ではH君、相続人の廃除の事由は、どのようなものですか。
H君:相続人の廃除事由は、次のとおりです。

  1. 遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して、虐待をしたとき。
  2. 被相続人に対して、重大な侮辱を加えたとき。
  3. 推定相続人に、その他の著しい非行があったとき。

以上の、3つです。

教授:I君、そのような、相続人の廃除事由の有無は、被相続人が自由に決定できるのですか。
I君:いいえ。相続権を剥奪するに足る廃除事由の有無は、虐待・侮辱・非行の程度、当事者の社会的地位、家庭の状況、教育程度、被相続人側の責任の有無、その他一切の事情を斟酌して、家庭裁判所が決定します。

教授:J君、「虐待」について、相続人の廃除が認められる場合を教えてください。
J君:具体的な裁判例をご紹介します。いずれも、戦前のものですが、判例としては今でも有効です。
老齢の被相続人の腕にかみついて負傷させ、さらに突きとばした行為を、虐待と認めたのがあります。
また、親をいつも、「馬鹿親爺」と罵倒し、えり首をつかんで引きずりまわし、病気をしても介抱しない子の行為は、虐待および侮辱にあたるとされました。

教授:K君、戦後の判例で、「虐待」について相続人の廃除を認めたのはありますか。
K君:はい。
相続人が、経済的に苦痛のない身分にありながら、住家の裏小屋に老齢かつ病気の両親を住まわせ、生活費を全く与えず、食べ物を要求する母親を押し倒し、全治5ヶ月の傷害を与え、さらに、「お前達は、首をくくって死ね」と、暴言をはいた行為は、虐待または著しい非行である、とされました。

教授:L君、「侮辱」について、相続人の廃除が認められる場合について説明してください。
L君:はい。
戦前の判例ですが、被相続人である養父を、告訴した行為。
財産争いから父子が、仇敵の間柄に発展し、子が草刈鎌で父を殴打傷害した行為。
親子の財産争いから、子が新聞に誹謗記事を投書し、「狂父」よばわりした行為。
これらはいずれも、「侮辱」として、相続人の廃除を認めました。

教授:M君、「著しい非行」について、相続人の廃除が認められた裁判例がありますか?
M君:いくつかありますのでご紹介しましょう。
婚姻前から数名の女性と関係して3人の子供を生ませ、結婚後も妻子および老齢の父母を捨てて他の女性と同棲した行為。
家庭の主婦が夫や子を捨て、父や夫の復帰の勧告にしたがわず、妻子のある男と同棲した行為。
大学に入学したが、ギャンブルと女遊びで中退し、親に無心をくりかえし、就職するからと言っては金を強要し、結婚すると言っては資金を出させた行為。
いずれも、「著しい非行」として、相続人の廃除が認められました。

教授:それではN君、逆に相続人の廃除が認められなかった裁判例がありますか。
N君:いくつかあります。
被相続人に対する言動(虐待・侮辱)が、一時の激情にかられたもので、将来反復のおそれがない場合。
遊蕩三昧にふけり、財産を濫費する被相続人たる父に対し、準禁治産宣告の申立をしても、それが被相続人の放埓な生活態度を反省させる為にしたものと認められる場合。
いずれも、相続人の廃除を認めませんでした。

教授:再びA君、相続人の廃除は、いつ、どのようにするのですか。
A君:相続人の廃除は、生前廃除と遺言廃除の2通りがあります。

教授:ではまず、生前廃除について説明してください。はいB君。
B君:生前廃除は、被相続人が自ら家庭裁判所に、廃除の請求をします。
そして、相続人の廃除の調停の成立又は審判の確定により、効力が生じます。

教授:C君、被相続人だけでなく、推定相続人である子供や配偶者も、廃除の請求ができますか。
C君:いいえ、できません。
相続人の廃除の請求は、被相続人のみができる一身専属権です。

教授:D君、遺言廃除は、遺言で相続人の廃除をするのですね。
D君:そうです。
相続開始後、遺言執行者が、遅滞なく家庭裁判所、廃除の請求をします。
そして、相続人の廃除の調停の成立または審判の確定により、効力が生じます。

教授:E君、相続人の廃除の効果は、調停の成立又は審判の確定により、直ちに発生するのですか。
E君:この答えは、調停の成立又は審判の確定が、相続の開始前か、開始後かによって異なります。
相続の開始前に、調停の成立又は審判の確定があったときは、即時に効果が発生します。
相続の開始後に、調停の成立又は審判の確定があったときは、相続開始の時に遡って発生します。

教授:ではF君、相続人の廃除をされた者は、誰からも相続できなくなるのですね。
F君:いいえ。
この効果は相対的(対人的)であって、廃除者たる被相続人に対してのみ相続権を奪われるだけです。
よって、他の者に対する相続権は失いません。

教授:G君、相続人の廃除は、取消しができますか。
G君:はい。被相続人は、いつでも、特別の理由を要せず、相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができます。また、被相続人は、遺言でこの取消しの請求をすることもできます。

教授:H君、相続人の廃除の取消しは、調停とか審判が必要ですか。
H君:はい。
調停の場合は、調停が成立し調書に記載されることによって、相続人の廃除の取消しの効力を生じます。
審判の場合は、審判がなされ、確定することによって取消しの効力を生じます。

教授:I君、相続人の廃除の取消し請求は、廃除された者からもできますか。
I君:いいえ。
相続人の廃除の取消し請求は被相続人のみができて、廃除された者から取消し請求はできません。

教授:みなさん、よく勉強していますね。
次回のテーマは、プリント通りですから、予習をしっかりやってきてください。

 

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